ラベル Silicon Valley の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Silicon Valley の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2015年2月9日月曜日

「シリーズA」を定義する? (2)

前回の続きで、「各ラウンドで調達した資金で何をどこまでやるべきか?」ということを考えてみます。前回までの到達点は、

シリーズAとは、企業が直面する第1回の(外部からの)大規模な資金調達ラウンドのことで、歴史的に「シリーズA」という名称のPreferred Stockを発行することが(米国で)多かったことからこのように呼ばれている

という感じでした(MVPならぬMVT=Minimum Viable 定義ということで、若干の不正確はご容赦ください笑)。

今回は、更にこれに実質的な視点を持ち込んでみます。すなわち、「Seed Moneyで至るべき到達点、Series A Moneyで至るべき到達点」はどんなものなのか??を探してみます。

まずはこちら。Twitterに対するExitを経験している起業家のEladさんが2011年に書いたブログでは、

・『製品をスケールさせて、ビジネスモデルを確立する』のがシリーズAで調達した資金を用いてやるべきことであり、典型的には$7M-$15Mくらいを調達する。
・『ビジネス自体をスケールさせる』のがシリーズBで調達した資金を用いてやるべきことであり、典型的には$7M-数十Mくらいを調達する。
・『成長を加速させ、ビジネスを国際化し、M&Aで他の企業を買ったりする』のがシリーズCで調達した資金を用いてやるべきことであり、数十~数百Mを調達する。

なんてことを仰っています。これ、2015年でも同じニュアンスなのでしょうか。

今回ご紹介したいのは、著名エンジェル投資家のJason Calacanisさんのブログです。1970年生まれのJasonさんはNetscapeなどドットコム・バブルを牽引したインターネット関連企業を経たあと、超名門ベンチャーキャピタルであるSequoia Capitalなどを経て、2009年からOpen Angel Forumというエンジェル投資家と起業家を結びつけるフォーラムなどを主宰しています。その投資先も、Tumblr、Uber、Evernoteなど著名企業が含まれている、影響力のあるエンジェル投資家の一人ですね。そのJasonさんは、

・時代によってそれぞれのラウンドで調達する資金を使ってやるべきことは変わってきている。

・それぞれのラウンドで調達できる額が大きくなってきている反面、やるべきことが前倒しで要求されるようになった。

・特に、以前であればSeries A/Bでやるべきことと考えられていたことが、リーン・スタートアップの普及により、かなり初期の段階で実践しておくべき事柄に変わりつつある

ということを仰っています。以下の図1をご覧下さい。Jasonさんの仰っているこのモデル、シリコンバレーのVCさんの間ではかなり共通認識に近いものがあるようです。

図1 各ラウンドで調達した資金でやるべきこと(2015年版:Jason Calcanisさんのブログを基に作成)

リーン・スタートアップについては私は専門家ではありませんし、巷間優れた書籍やブログがあるのでそちらを見て戴いた方がいいのですが、特にPre-fundingの段階でMVP(Minimum Viable Product。エリック・リースの原著では "The MVP is that version of the product that enables a full turn of the Build-Measure-Learn loop with a minimum amount of effort and the least amount of development time."とされていますが(Eric Ries, The Lean Startup, at 77 (Crown Publishing 2011))、邦訳では「実用最小限の製品」と訳されているようです。)まで作れ、と考えられているという部分はなかなかのインパクトがありますよね。

こうやって考えてみると、以前のポストで書いた「シード段階でのバリュエーションが上がり過ぎている?」という話も、昔だったらシリーズAあたりでついたはずのバリュエーションがシード段階で付いているだけ?と考えると、納得の行く話でもあります。勿論VCからみると、ビジネスとして投資をスケールさせるのが難しくなっていくのに変わりは無いため、善し悪しだとは思うのですが。

というわけで長々とお話してきましたが、このJasonさんの考えを取り入れ、2015年版シリーズAを定義しますと、

(1) 企業が直面する第1回の大規模な(外部からの)資金調達ラウンドであって、
(2) ローンチされたMVPをスケールさせるために用いる資金を調達するものであり、
(3) その対価として、歴史的に、「シリーズA」という名称のPreferred Stockを発行することが(米国で)多かったことから、こう呼ばれているもの

ということになりそうです(これは最新過ぎる、ということであれば、(2)を「ローンチされたMVPに牽引力を持たせ、スケールさせるために用いる資金を調達するものであり」に変えてみるといいのかな?)。

もちろん以上の議論はアメリカのものであって、日本のスタートアップにそのまま持ち込まれる話ではありません。ただ、日本のVCの活動にもシリコンバレーのVCの考え方は一定程度影響を及ぼすと思いますので、近い将来、同じようなことが日本で言われることもあるかもしれませんね(個人的には、勿論シリコンバレー流を参考にすべきは参考にし、しかし日本の文化に合わないものは無理して取り入れるべきではない、と思っていますが。)。JasonさんのブログはStartup界隈のお話がとても面白く語られているので、もしご興味がありましたらまた読んでみてください。

珍しく宿題を一つ片付け、肩の荷が下りた気分でございます笑 さぁ2月も中盤戦!今週も頑張って参りましょう!

2015年2月4日水曜日

「シリーズA」を定義する? (1)

Startup界隈のお仕事に関わっていると、毎日のように「●●はシリーズAで□□から●ドル入れてもらったらしい」とか「△△はまだシードラウンドでエンジェルを探しているけれど、なかなかうまく行っていないらしい」というようなお話を聞きます。

シリーズなんちゃら、という言葉や「シード」とか「ラウンド」とか、起業された方にとっては当たり前のこれらの言葉ですが、その正確な意味はどんなものなのでしょう。

まずGoogleで「シリーズA」と検索してみたところ、「マネー辞典」さんというウェブサイトで

『ベンチャー企業に対し、ベンチャーキャピタル等が出資する段階のひとつで、起業したばかりのスタートアップ企業に対してなされる投資のこと。製品の企画、開発やそれに伴う技術開発などに対してシリーズAの投資がなされる。』

と書いてありました。ふむふむ。お次は「投資用語集」というウェブサイト、

スタートアップ企業に対してベンチャーキャピタル等が出資する初期の投資ラウンドのことで、製品の企画、開発やそれに伴う技術開発などに対して投資がなされ、事業を開始し、技術開発によって製品を生み出すことが主眼となる』

と書いてありました。ふむふむふむ、この2つは似ていますね。これに対し、個人の方が書かれているウェブサイトでは、

『(シリーズAとは)開発試作を進めている段階。有望そうなアイデアであると、VCが参入する。優先株の発行を行う。』
とか
『VCの出資を初めて受ける段階をシリーズAとよぶ。』

などと書いてあるモノがみつかりました。むむむむむ。

で、では本場のサイトではどうでしょう(以下翻訳は意訳が含まれています。周辺の文脈も含めて検討されたい場合には原典をお当たりください。)。まずInvestopediaでは

新しい企業がシードキャピタル後に経験する最初の資金調達ラウンド。一般的には、会社の支配権が外部の投資家にオファーされる最初の機会。シリーズA投資はPreferred Stockの形で提供され、その後のエクイティによる資金調達があった場合に希薄化防止条項が入る場合が多い。』(意訳部分あり)

と書いてありまして(Preferred Stockを「優先株」と訳さない理由は以前の記事をご参照下さい。)、アーリーステージのハイリスク投資を行うVCやエンジェルが投資するものだよ、とされています。

弁護士のクセにWiki引用するな!とどこからともなくお怒りの声が聞こえてきますが、ブログなのでご容赦いただき、US Wikiで調べてみます。
「セリエA」…あれ?イタリアのサッカー?という罠をかいくぐりますと、

会社の最初の実質的なVC投資ラウンドの典型的な呼び名その呼び名は、当該投資の代わりに当該投資を行った投資家に対して発行されるPreferred Stockの名称による。』

と書いてあります。おおお!遂に語源らしきものが出てきました(Wikiですが笑)。

以上の流れから分かりますように、「シリーズA」という言葉には厳密な定義はなさそうですし、少なくとも法令用語でもありません。もう少し詳しく探ってみましょう。

・米国では、1回1回の募集株式の発行(増資)のことを「ラウンド(Round)」と称していた(1997年刊行の古い書籍ですが、名著『ベンチャー投資の実務』(MVC/三井物産業務部編、日本経済新聞社)13頁))。
・「Round」の使い方としては、時系列に順番をつけて1st Round/2nd Round…と呼ぶこともあるし、会社の成長段階に応じてシード・ラウンド、アーリー・ラウンド、などと表現することもある。
・これに対し、『その時に発行する株式の名称に応じて「シリーズA・ラウンド」などと区別することもある。』(前掲・ベンチャー投資の実務13頁)。すなわち、米国では、『条件の違う優先株を各ラウンドで次々と発行していくときは、発行順に「シリーズ(またはクラス)A、B、C…」などと、名前を付けて区別する』(前掲・ベンチャー投資の実務20頁)ことが行われてきたことから、当該ラウンドで発行する株式の名前をとって「シリーズA・ラウンド」と呼んでいたものが、いつの間にか「第1回の実質的な資金調達」と意味を変化させていった、というのが正解のように思われます。

なるほど!そうすると、ニュアンスとしては「シリーズA」=第1回の大規模な資金調達、ということが言えそうですね。ただ、前々回のポストで書いたように、いまやシリーズAの前のシードラウンドで$4.5Mのバリュエーションが付いちゃう時代。$1M以上のシードマネーをVCから集めるStartupさんたちだっています。そんな世の中では、一昔前のシリーズAといまのシードラウンドの調達をうまく「大規模な資金調達」という量の問題で区別できるんでしょうか。すなわち、「なんのために調達する資金なの?」という観点を入れた方が、より厳密な定義に近づいていくのではないか、と個人的には思うわけです。

言い換えると、スタートアップ界隈の環境も状況も、変わり続けている。ってことは、「シリーズA」という言葉の定義だけでなく、「シリーズAでやるべきこと」の意味も変わり続けているのでは??

次回、各ラウンドで調達したお金で何をどこまでやると次のラウンドに進めるのか、最新の議論を追ってみたいと思います。




2015年2月1日日曜日

アメリカでの会社設立(1)

アメリカでビジネスを始めようとする場合、どの種類の法人を作るのかということをまず検討することが多いのではないでしょうか。

もちろん、

法人なし、身1つで立身出世じゃ!!!

と考える方もいらっしゃると思いますが、その場合、いざ失敗した時に、負債等のリスクを全面的にその個人の方が追わなければならないことになるため、あまり合理的な手段ではないと思います。

ということで、法人を作ろう!という話になるのですが(法人を作る意味等について知りたい方がいれば、この記事と同じようなカジュアルな論調で説明しますのでご連絡くださいませ)、日本にもたくさんの種類の法人があるように(例:株式会社、合同会社、組合、有限責任組合)、アメリカにもたくさんの種類の法人があります。

よく検討の遡上にあがってくる法人としては、
Corporation
LLC (Limited Liability Company)
Partnership
LLP (Limited Liability Partnership)

といったものがあり(厳密には「法人」とは言えないものも含んでいますが、メンドクサイので「法人」と言っておきます。ご容赦を。)、さらに、①の派生法人(?)として、

SCorporation(これとの対比で、①のことをC-Corporationと呼んだりします。)

というのも、ちらりと顔を覗かせたりするかもしれません。

ということで(どうゆうことで?)、まずはCorporationから。

Corporationは、日本でいうところの株式会社です。もっとも典型的な法人といって良いと思います。日本における株式会社とほぼ同じと考えてもらって問題ないと思いますが、日本の株式会社が、取締役会非設置/設置会社だの、監査役設置会社、監査等委員会設置会社(留学中にいつのまにかできてましたね)だの、新株予約権だの社債だの、かなり緻密に作られていますが、こちら(代表選手はデラウェア州)のCorporationは、そんなまどろっこしい区分はありません。取締役は1名からOKですし、仮に取締役が1名であってもBoard of Directors(取締役会)というものは存在します。もちろん、Board of Directorsの構成とか、権限とか、株式の譲渡制限とか、そういった細々したものはCeertificate of Incorporation(日本でいう定款)やBylaws(日本での位置付けが難しいですが、さしずめ、取締役会規程や株式取扱規程といったところでしょうか)で定めることもできますが、デフォルトのCorporationは、一種類しかなく、その意味で極めて単純です(余談ですが、お世話になっているof counselと日本の会社絡みの案件について話をしたとき、「取締役会設置会社と取締役が複数名いる取締役設置会社で何が違うのさ?別に取締役1名だってそれをBoard of Directorsって呼んだって良いじゃん!」みたいな話になり、ムムム…と思いました。)。

このような点や、登記制度がない(後日説明しますが、デラウェアのCorporation設立に必要なものは、Certificate of Incorporationのファイリングだけです。)ことをもって、「アメリカの会社制度は日本の会社制度よりも柔軟」と評価されたりするのかもしれません(個人的な感想ですが、「柔軟」というよりも「適当」といった方が的を射ている気がしますが。いまいち、理論的に「?」がつくものが多い気がするんですよね。。。)

このCorporationと他の法人を比べた時にもっとも大きく違う点は、「二重課税」の問題ということになると思います。二重課税というのは、オーナーである株主にお金がいくまでに、会社が収益を上げた時点で法人税が課され、さらに、株主に配当する段階でその配当に対しても課税が生じるということを意味します。これが、他の法人ですと、オーナー個人だけに税金が課されることになったり、法人の損益がオーナーにパススルーされたりするため(詳しくは後日)、法人レベルでは課税されない →「一重課税」→「メリット大」みたいな説明がよくなされる訳です。

しかし、これ、特にスタートアップに関しては、まったく当てはまらない議論です。相方が以前に言っていた通り、スタートアップで配当なんかする会社は皆無ですから、したがって、「Corporationにしたから2番目の課税が生じちゃうな〜。じゃ、他の法人にしよっかな〜」なんて、基本的に考える人はいないんです。となると、Corporationも他の法人とあまり変わりがないことになりますね(もちろん、「一重」といっても、法人レベルか個人レベルかの違いはあるわけで、後者にメリットを感じてCorporation以外の法人を選択することはあり得ます。この点もおいおい)。実際のところ、シリコンバレーのスタートアップに関して言えば、90%以上(99%と言っても良いかもしれません)がCorporation、それもDelaware州のCorporationとして設立されています。

なぜ?

長くなってしまいましたので、この点については、また次回ということで。
宿題が日に日に溜まっている気がしますが、ま、気にしな気にしない。

もう2月ですね。皆さん、今週もがんばっていきましょう!!!
竹内信紀

2015年1月30日金曜日

シード・バリュエーションに関する与太話

Waze、というアプリをご存じでしょうか。Waze Inc.という会社が提供している無料のカーナビアプリで、日本語版もあります。

(Wazeのウェブサイトより)
我々が現在住んでいるカリフォルニアでは、このアプリは極めて有名だったりします。何故か。それは、内容的にユニークな特徴をもっているアプリであることは勿論ですが、Googleが2013年6月に約$1B(現在のレートだと1200億円近く)で買収したこと、という大きなニュースがあったからでもあります。

日本で使われている方も増えているかもしれませんが、このアプリ、使用しているユーザの走行スピードを統計上の走行スピードと照会して渋滞や道路の流れを表示したり、カーナビとして使用中に「警察官がいるよ」とか簡単にアイコン入力できることから、分母である使用ユーザ数が多ければ多いほど「リアルタイム」の道路情報を表示することができます。

渋滞を避けるルートの計算アルゴリズムは若干まだ「?」と思うときも、ないではありません。が、発想としては極めて素直ですし、何より渋滞のリアルタイム情報が取れるのはとても便利。Google Mapを有するGoogleが買うのも、よくよく分かります。他方、警察が懸念を示して警察のトラッキング機能を外せないかと何度も議論になるなど、物議を醸す程度以上に普及している、ということが言えそうです(日本だと道が細いので、アメリカ版のUIのアニメっぽいユーザアイコンだと道が見えないかもしれませんね笑)。

お次はOutbrain。コンテンツ・リコメンド・エンジンというサービスを用いた広告会社で、ちょっと不正確を恐れずに言えば、検索エンジンをも〜っと目的とユーザによってカスタマイズしたようなサービスと、関連する情報などを主な収益源としているようです。

(Outbrainウェブサイトより)
このOutbrain、昨年(2014年)末に、そろそろIPOをするのかなーなんて観測が良くでておりました。EVは少なくとも$1Bと、こちらも素晴らしい規模の会社です。既にIPOのための初期的なファイリングは済ませており、適切な時期を探っている段階と言われています。

さてさて、ちょっと回りくどい文章になってしまいましたが、このWazeとOutbrainの共通点は何でしょうか。それは、イスラエルの企業であること(この2社はイスラエルの企業であることもよく知られている要因なので、「何を今更」という感じですね、、、すみません。)。

このイスラエル、これまたご存じのとおり世界を席巻する「Startup Nation」として、テルアビブにはたくさんのインキュベータ/アクセラレータがあると言われていますし(行ったことないですが)、日本からもサムライインキュベートさんがSamurai Houseをお持ちであったりトヨタさんがイベントを開催したりと、極めて盛り上がっているようです(このサイトを見ると、テルアビブ界隈が如何に盛り上がっているかよく分かります。)。

シリコンバレーのVC業界の方とお話していると、イスラエルのStartupの話は頻繁に出てきます。それは、優秀な方が多く、優秀なStarupが多く、そして何より、エンジェルステージでのバリュエーションが適切なレベルに抑えられているため、アーリー投資がし易い、というお話です(あと、意外とヘルステック系の会社が多くて面白いなんて意見も。)。

それもそのはず、2014年のシリコンバレーのテック系Startupのエンジェルステージ平均バリュエーションは、なんと$4.7MAngelListによる)!
こちらのVCの方々とお話させていただくと、エンジェルステージでのバリュエーションは$1.5M-2.5M程度であるべきだという意見に比較的同調されている方が多い印象です。そうだとするとやはり2倍近いバリュエーションが付いてしまっているのが実情、ということになりますでしょうか。

残念ながら公表されている利用可能なデータでイスラエルのStartupのシードラウンドの平均バリュエーションがでているモノを見つけられていないのですが、口頭ベースの噂では、イスラエルのStartupのシード・バリュエーションは、この「適正なレンジ」に収まっていることが多いとのこと。それでWazeやOutbrainのように輝かしいExitが見据えられる企業が雨後の筍のように出てくるのですから、それはもうVCさんたちが放っておくはずがありません。

翻って我が日本でも、日経1月30日付朝刊にジャフコの執行役員の方の「投資現場で過熱感がでている」というコメントが載っておりましたこともあり、今日はこんなポストを書いてみました。

世界共通の流れとしてバリュエーションが上がっているということなのでしょうか。宿題だらけになってきましたが、来週は「シリーズなんちゃら」って結局なんなの?という話を取り上げようかな、と思っております。

今週末はスーパーボウル!よい週末をお過ごし下さい!




2015年1月28日水曜日

日本とアメリカ、どちらに会社を作るべきか?(2)

前回の投稿で、相方がこっちにボールを投げてきましたねぇ。ええ、イイ球です。ズバッと真ん中に投げ込んできました。
この場合、驚きのあまり思わず見逃し、気持ちを切り替えて次の球に狙いを絞る・・・なんてことはしません(笑)。好球必打、打ちにいってやろうと思います。

さて、

「日本とアメリカのどちらで会社を作った方が良いか」

このテーマは、シリコンバレー、さらには世界を見据えて起業しようとしている方に取って、まずぶつかる法的な問題なのかもしれません。

相方は、「VCからの視点」ということで、シリコンバレーのVCは、原則としてアメリカ法人にしかお金を入れない、だからシリコンバレーのVCからお金を調達することを目論んでいるのであれば、米国法人が選択肢としてあがってくるというお話をしていました。

では、「会社からの視点」ではどうなるのでしょうか?

WSGRでは、基本的に会社側に立ってアドバイスを提供していますが、その際に何か違いが出てくるのでしょうか?

答えは「

実は、日本法人を選択するか米国法人を選択するかで、VCからの資金調達の可能性と方向性が大きく変わってくることは、この手の悩みを抱えているスタートアップの方に、いの一番にお話する内容です。

なぜなら、最初から潤沢な資金を持ち合わせている例外的な場合を除き、ほとんどのスタートアップが、ビジネスを発展させていくに足るだけの資金を持ち合わせておらず、遅かれ早かれ外部から資金を調達する必要があるからです。

そのため、どちらの法人が望ましいか悩まれているスタートアップの方には、資金調達を最初からシリコンバレーで行うつもりであればデラウェア法人(なぜデラウェアかは追って説明します。)、日本で行うつもりであれば日本法人、というアドバイスをすることが一般的です。

要するに、「当面の資金調達先として日本とアメリカのどちらを考えているのか」ということがメインです。もちろん、スタートしようとしているビジネスがアメリカで受け入れられやすいのか、逆に日本で受け入れられやすいのか等、ビジネスの内容等も考慮する必要はあるとは思うのですが、結局アメリカで受け入れられやすいビジネスであれば、地元アメリカのVCがまずは興味をもつはずで、そうなるとアメリカのVCから資金調達することを念頭に置いた方が合理的、ならばアメリカ法人にしましょうかということになると思いますし、逆もまたしかりですね。結局のところ、当面の資金調達先が日本なのかアメリカなのか、その点に尽きるのではないかと思います。

ただ、ここで一点誤解しないようにしたいのは、「日本での資金調達がメイン→世界で戦えない」という図式には必ずしもならないということです。もちろん、ビジネスの内容が日本特有のものであり、したがって日本の投資家しか惹き付けられなかったというのであれば話は別ですが、日本で資金を調達したからといって世界で戦えなくなる必然性は無い訳です。周りを見渡せば、日本の株式会社のままで世界で戦っている会社さんがゴマンといますしね。むしろ、日本で資金調達がしやすいのであれば、まずは日本で資金を得て速やかに成長させ、その後にアメリカで資金調達を目論んでも遅くはありません。その際に、親会社をデラウェア法人にする必要があるのであれば、課税が生じないようにしながらそれを実現する方法も考案されています(この点もおいおい説明します。)。

長くなりましたが、日本法人かアメリカ法人かを検討するにあたって意識すべき最重要ポイントは、

「ビジネスを成長させる。そのための資金は日米どちらが調達しやすいか。」

ということなのだろうと思います。

せっかく法人の話になりましたので、今後、日米をまたにかけながら(多分)、各法人の特徴や設立手続、費用等々について、基本的なことを書いていきたいと思います。
竹内信紀


2015年1月27日火曜日

日本とアメリカ、どちらに会社を作るべきか? (1)

読者の方が、あるビジネスの実行を検討しているとします。そのビジネスは日本国内に止まるものではありません。世界最大のGDPを誇るアメリカを通じ、世界で戦っていくべきビジネスだとします。

さて、そのときに、一体会社は日本とアメリカのどちらに作るべきなのでしょうか?

実はこの問題、多くの起業家の方が直面している難問であり、綺麗に場合分けしていけばコレという正解が出てくるものではありません。会社のビジネスモデル、目指す姿など、それぞれの状況に応じて答えが変わってくるものです。

まず、以下の図をご覧下さい。ここには書いてありませんが、勿論、アメリカに会社を作った場合の最大のメリットは、①ビジネスを最初から世界展開できる、②資金調達に成功した場合に調達できる額が大きい、ということになりますよね。

が、しかし。色々な問題が出てきそうですよ。


今回は、これらの項目のうち、「VCから見ると」を取り上げます。つまり、VCからの資金調達を目指す起業家の方にとって、日米のどちらに法人を持っていると有利か、という問題を考えてみます(あれ?設立コストとか、他の項目は?? 大丈夫、いつか書きます。多分主に相棒が。)。

米国のVCからみたとき、一つ大きく言えることがあります。それは、

比較的アーリーステージで米国VCからファイナンスをしたい場合、米国に会社がないと難しい

ということです。勿論例外もあるでしょうし、例えばイーロン・マスクさんが出身である南アフリカに会社を設立してファイナンスを求めれば、米国のVCはそれに応じるでしょう。しかし、一般的に言って、米国の、特にパロアルトはサンド・ヒル・ロードを中心とするシリコンバレーのVCが、米国外の法人にアーリー投資を実行することはありません。

つまり、最初から起業家の方が米国での資金調達を意識している場合、米国に会社を作っておいた方がいい可能性が出てくることになります(本論からは外れますが、日本法人の子会社として米国会社を用意しても、米国VC側から見ると日本の親会社に対して投資しなければキャピタルゲインが得られないため、あまり意味がないという評価になるでしょう。)。

これに対し、日本のVCはどうでしょうか?

日本のVCの中には、確かに、日本の株式会社にしか投資しないというポリシーをお持ちのところが多くあります。それは、例えばファンドへの出資者への説明のし易さなどの観点から考えれば、十分合理性のある考え方だということが分かります。

これに対し、日本のVCの中には、米国を初めとする海外の会社への投資に全く差し支えがないというところもあり、近時はそのようなVCさんも増えているやに聞きます。そうすると、日本のVCからの資金調達という観点は「米国法人を設立することのデメリットになる」とまでは言えない、ということになりそうです。

「ならアメリカで設立すればいいじゃないか!」
「必要なら日本に子会社を作ってもいい。それなら米国VCからのファイナンスにも差し支えないんでしょ?」

という声が聞こえてきそうですが、、、確かに最近ではアメリカ法人を最初から設立して世界で戦っていこうとするStartupさんが増えています。しかし、やはり海外で会社を設立してビジネスを展開するということは、楽ではありません。上図の他の項目のような、有形無形の問題が降りかかってきます(そもそも米国VCから資金調達をすること自体が極めて難しいと言えますが、競争力の問題が主なのでその観点は一先ず措きます。)。

それから、ビザ問題です。実はこれがまた大問題。アメリカほどエンジェル/シードラウンドで調達できる額が多くない日本から、投資ビザ(E2)を取得するほどのエクイティを米国に持ち込むことができるでしょうか。企業の駐在でいらっしゃっておられる方は特に意識することはないと思いますが、本気で米国で事業をやっていこうとする方には死活問題です。

今日はちょっと長くなってしまいましたので、また次回以降、続けます(関係ないテーマを挟んだらゴメンナサイ。。)。


気付けば一月も最終週。早すぎる時の流れに焦るばかりですが、今週も張り切って参りましょう!

2015年1月23日金曜日

StartupとLaw Firm(5)

(5)Fee体系

Startupの方々がローファームに依頼するにあたって最も気にされる点、それリーガルフィーではないかと思います。

「日本の大手事務所は高い。アメリカのローファームは目が飛び出るくらい高い。」

そんな印象をお持ちの方、かなり多いのではないかと思います。

日本の大手事務所もアメリカのローファームも、基本的にタイムチャージベースで仕事の依頼を受けることには変わりないのですが、まず大きく違うのが時間あたりのレート。日本の大手事務所ですと、若手のアソシエイトが大体1時間あたり2万円前後からスタートし、キャリアを積むごとにレートが上がっていき、パートナークラスになれば、3万とか4万円とか5万円になります。

これに対して、米国のローファームは、やはり俄然高し。ファームにもよりますが、大手になれば、アソシエイトレベルで時間あたり$400$500チャージすることも珍しくなく、パートナークラスになると$800から$1000、あるいはそれ以上をチャージすることもままあります。

それはそれで、それだけの価値があるといえる場合がほとんどだとは思うのですが、それにしても高いですよね。日本のローファームですら高いと感じる日本人(実際払う身になってみると分かりますが、ぶっちゃけ高いです。)、そして、そもそも論としてお金がないStartupの方々には、米国ローファームのリーガルフィーなんて、それこそ目からビームが出てしまうくらい高いと感じることでしょう。

…が、これは何も日本人に限ったことではありません。シリコンバレーのStartupだって、もちろんお金がありません。将来資金調達できる可能性は日本より高いのかもしれませんが、手元不如意な状況なわけです。

そんなStartupに継続的にリーガルサービスを提供しようとする以上、ローファーム側も、フィー体系を工夫し、Startupが利用しやすくする一方で、過度にローファーム側がリスクを背負い込まない形のフィーを提案しています。例えば:

   ディファーラル
Startup関連法務の初期費用の支払いを、最初の資金調達(50万ドルなど、一定の水準のもの)実行時まで猶予することがあります。ただし、リスクを抑えるべく、一定の金額(2万ドルや3万ドル)までリーガルサービスを提供したら、それ以降はリーガルサービスを提供しません。

   株式の引受
Startupからフィーを回収できないリスクや、そのStartupの有望性等に応じて、ファウンダーが最初に株式を引き受けるのと同じ価格(通常は1株あたり0.00001ドルなどノミナルな額)で、ローファームも数%株式を引き受けさせてもらうことがあります。

   デポジット
万が一の場合の実費等の支払に充当するため、委任を受ける段階で一定額のデポジット(例えば1000ドル)をお願いすることがあります。

日本人が思いつく「Startupが利用しやすくする」方法の典型であるフィーの割引は、あまり見かけません。これはおそらく、Startupからの依頼が膨大だからなのかなと思います。膨大な数のStartupにフィーの割引を提供したら、そのフィーがスタンダードになっちゃうかもしれないですからね。

また、フィーキャップも、特にStartup初期の法務関係ではあまり見かけません。もちろん、 フィーキャップで対応しているファームもあるのだろうとは思いますが、そもそも、キャップがあろうがあるまいが、お金がない以上は払えないですからね。そうであれば、払える段階になったときにこれまで提供したサービスの分は、通常通りしっかりと払ってもらうという方が、合理的なのかもしれません。

Startupからいただくリーガルフィーの体系には、色々と工夫の余地があるのだと思います。その工夫をするためには、Startup市場を正確に把握し、回収不能になるリスクと資金調達等に成功する可能性等を色々分析しながら考える必要があるのでしょうが、残念ながらこれ、多くの日本の弁護士の苦手分野です(苦笑)。でもStartupの支援をしようとする以上、避けては通れない道の1つだと思いますので、四苦八苦しながらやっていかねば!…と意気盛んになったり、「外注」という言葉が急に頭をもたげてみたり。。。

すいません、収拾がつかなくなりました(笑)。
ということで(?)、今日は金曜日、がんばっていきましょう!

竹内信紀