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2015年2月16日月曜日

アメリカでの会社設立(4)

さて、

どうやってDelaware Corporationを設立するか

という点ですが、日本で株式会社を設立する根拠が会社法にあるように、Delaware Corporateionを設立する根拠も、当然デラウェア州の会社法、すなわち、デラウェア州のGeneral Corporation Lawにあるわけです。

で、その General Corporation Lawなんですが、これが大変読みにくい(そもそも、アメリカの法律って、全体的に整理されてなくて読みにくいんですが…)。別に読まなくても問題なく会社は設立できますし、実際、アメリカのCorporate Lawyerと言われる弁護士がどれだけGeneral Corporation Lawを正確に把握しているかというと、実は「?」がつくことも多いような気もするんですが、それはさておき、とりあえず、最初くらいは法律から始めてみようと思います。

General Corporation Law106条には、以下のとおり規定されています。

"Upon the filing with the Secretary of State of the certificate of incorporation, [] the incorporator [] shall, from the date of such filing, be and constitute a body corporate, by the name set forth in the certificate []."

「略」の多さから分かっていただける通り、こんな基本的な条文からして早速読むのがメンドクサイんですが、要するに、「Certificate of incorporation をデラウェア州のSecretary of Stateにファイリングした日から、当該Certificateに定められた名称で会社が設立されますよ。」と書いてあるわけです。

Certificate of Incorporation、日本語に訳すと「定款」。
つまり、定款をデラウェア州に登録すればそれで会社設立は完了です。

ちなみに、「定款」を和英辞典で検索すると、「Article of Incorporation」というのも出てくるかと思いますが、これは、カリフォルニア州(もしかしたら他の州でも)の会社法で使われている表現であり、デラウェア州では「Certificate of Incorporation」と言っているというだけに過ぎません。表現は違えど指しているモノは一緒、と理解してもらえれば良いと思います。

で、デラウェア州の定款ですが、何を規定しなければならないかというと、必須事項としては、
(1)     会社の名称(the name of the corporation
(2)     デラウェア州内における会社の住所とエージェントの名称(the address [] of the corporation's registered office in this State, and the name of its registered agent at such address)
(3)     会社の事業の目的(the nature of the business or purposes to be conducted or promoted
(4)     発行可能株式総数及び一株あたりの額面価格(the total number of shares of stock which the corporation shall have authority to issue and the par value of each of such shares
(5)     設立者の氏名及び郵送先住所(The name and mailing address of the incorporator or incorporators
となっています。

(1)は特に問題ないと思います。強いて言えば、Incorporation (Inc.)ですとかLimited (Ltd)ですとか、そいった会社であることを示す所定の文言を入れなければならないといった点でしょうか(これは、日本でも同じ規制がありますね。)。

(3)ですが、これも、実務上は、「法律上認められている一切の活動」といったような包括的な内容でOKとされていますので、問題ないでしょう(日本は、一昔前まで具体的な事業目的を定めなければならなかったのですが、今はその実務が変更され、デラウェアと同じような感じになってますね)。

(4)ですが、発行可能株式総数は、その名の通り、会社が発行できる株式の最大数を示すものです。シリコンバレーですと、通常、1000万株や1500万株でスタートするのが一般的です。Par valueというのは、株式の「額面価格」で、要するに、株式を発行する際の最低価格を示すものです。株式を発行する際には、この価格を下回ってはいけないという制約がつくわけですが、シリコンバレーでは、この価格が$0.01とか$0.00001に設定するのが通常のため、ほとんど意味のある数字ではありません。ちなみに、一株あたりの実際の購入価格を示す際に用いられる「per value」とは、微妙にスペルが違う上に全く意味が違いますので、ご注意をば。

(5)ですが、これはそのまんまの意味です。別に外国の住所だって問題ありません。むしろ、日本人が日本でDelaware Corporationを設立する場合には、ここが日本の住所になることが通常かと。

で、後回しにしてきた(2)ですが、これについてはまた後ほど。別に今書いてもいいんですが、ちょっと長くなってきたので、分けて書こうと思います。

でわまた。
竹内信紀

2015年2月13日金曜日

アメリカでの会社設立(3)

前回、どの州でCorporationを設立すべきかという点に関して、

②特にアメリカでの資金調達を考えておらず、純粋な現地子会社に過ぎないのであれば、California corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)


と書いたかと思います。

前回触れられなかったので、今回はこの点について。

Delaware corporationで設立する最も大きな理由が「投資家目線」であることは、前回説明した通りです。

そして、「純粋な現地子会社」の場合、この「投資家目線」というのは、全く必要ない訳です。この手の子会社の場合、基本的には、日本の親会社が必要な資金はすべて入れてくれることが想定されてますからね。

では、



(B)会社法を専門に扱っている裁判所があり、迅速で判例も多いので、予測可能生が高い
(C)デラウェア裁判所は、きちんとやるべきことをやっていればDirectorsのビジネス判断を尊重してくれる傾向にある

といった理由がどれほど当てはまるかというと、これも正直「?」がつくことが多いのではないかと思います。日本の親会社が100%親会社として君臨している以上、会社法絡みで揉めごとになることも少なくなりますし、株主代表訴訟のさらされるリスクも低くなります。


ということで、「純粋な現地子会社」については、積極的にDelaware corporationを選択する理由が乏しくなってくるわけです。


そして、Delaware corporationを設立することによって生じるFranchise taxの存在を考えると、デラウェア州で積極的にビジネスを展開するのでない限り、Delaware corporationで設立することがデメリットとなる可能性があります。


Franchise taxというのは、2010年8月からデラウェア州でDelaware corporationに対して課されるようになった税金で、言ってしまえば、デラウェア州でCorporationを設立したことに対する「みかじめ料」みたいなものです。


この税金、最小で年間$175、最大で年間$180,000と、かなり大きな振れ幅があるのですが、基本的には、Authorized shares(発行可能株式総数)をベースに計算されます。


具体的には、発行可能株式総数が


5千株以下 → $175

5千株超1万株以下以下 → $250
1万株超 → 1万株ごとに$75

といった感じです。


これとは別に、1株あたりの株式価値をベースに計算する方法もあるのですが、気前の良いことに、発行可能株式総数ベースの計算と1株あたりの株式価値ベースの計算とで、「どちらか低い方」を選べば良いことになっています。


となると、日本に100%親会社があって、発行可能株式総数は100株とかせいぜい1000株の会社の場合には、Franchise taxはせいぜい年間$175だったりするわけですが、そうは言っても、あえてDelaware corporationにする積極的な理由も無いのに年間$175もみかじめ料を払うのはちょっとね・・・ということで、基本的には、「純粋な現地子会社」については、California corporationでいいんじゃないですか?とアドバイスを差し上げているわけです。


それに、Delaware法人がカリフォルニアでビジネスする場合には、Qualification to do businessというのをカリフォルニア州から得なければならず、そこでまた余計な時間と費用が生じます(これも、しっかりした親会社が日本にあるような会社からすれば些細なものなんですけどね)。ということで、やっぱり「純粋な現地法人」にはCalifornia corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)がおすすめだよ、ということになりそうです。


余談ですが、このデラウェア州のFranchise tax、実は、「純粋な現地法人」よりも、スタートアップの方により影響があります。というのも、シリコンバレーのスタートアップは、通常1000万株や1500万株の発行可能株式総数で設立されるからです。この株数を前提にみかじめ料を計算すると、あっという間に$180,000に!おいおい、そんな額、スタートアップには負担が大きすぎますって!!


…でも大丈夫です。先ほど言った通り、1株あたりの株式価値をベースに算定する方式が別に用意されていて、こちらの最低税額は$350。で、スタートアップはもちろんこの$350の税額に収まる訳です(こちらの計算式については、おいおい、必要に応じて)。


ということで、スタートアップの皆さん、(年間$350のみかじめ料も結構高いですけど)安心してデラウェア州でCorporationを設立しくださいね!

次回からは、具体的な設立手続きについて入り込んでいきたいと思います。
竹内信紀






2015年2月8日日曜日

アメリカでの会社設立(2)

アメリカでCorporation形態で会社を設立しようとした場合、次に考えなければならないのは、

どの州でCorporationを設立するか

という点です。

アメリカでは、アメリカ合衆国憲法で連邦レベルで定めるべしとされている事項以外の事項は、基本的に州の法律に立法が委ねられており、会社関係の法律もしっかりと州法に委ねられています。

そのため、Corporationも州ごとの立法に基づいて設立され、例えば、デラウェアで設立された会社はDelaware corporation、カリフォルニアで設立された会社はCalifornia corporationと言ったりします。

さて、私が勤務しているWSGRはカリフォルニア州にありますので、日本の方からアメリカでの会社設立の相談を受ける場合、基本的には、California corporationかそれともDelaware corporationかという相談を受けることになります。

そして、この相談に対するアドバイスは、

①スタートアップ等で、将来、アメリカでの資金調達を考えているのであれば、Delaware corporation

逆に、

②特にアメリカでの資金調達を考えておらず、純粋な現地子会社に過ぎないのであれば、California corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)

ということになります。

では、①スタートアップ等で、将来アメリカでの資金調達を考えている場合には、なぜDelaware corporationがベストなのでしょうか。

答えはいくつかあるのですが、もっとも重要なのは、

VCを初めとする投資家が、Delaware corporationの実務に慣れているから(もっと言えば、他の州のCorporationについては、正直良くわかっていないから)

ということになります。

めちゃくちゃ投資家目線ですが、お金を入れてくれるのは投資家なんですから、これは仕方のないことです。

中には、Delaware corporation以外のcorporationであっても投資してくれるところもありますが、多くの場合、投資段階でCalifornia corporation からDelaware corporationへの鞍替えを求められます。運良く鞍替えしないまま投資を受け、事業を発展させることができても、いざIPOの段階になって、引受証券会社がDelaware corporationへの鞍替えを求めてくることも多いようです。

California corporationからDelaware corporationへの鞍替え自体は、デラウェアに100%子会社を作ってぶら下げて、その子会社(Delaware)と親会社(California)との間で逆さ合併するといった、僕がNYU留学時代に、偉大なるProf. John Slain(なぜ偉大なのかは、一部の友人が知っています。)から教わった方法そのまんまの方法が用いられるのが通常な訳なのですが、もちろん弁護士報酬もかかりますし、ある程度育ってしまった会社ですと、この逆さ合併が色々な契約のChange of Control条項にヒットすることになり、やれ通知だ、やれ同意の取得だ等々、大変メンドクサイ事務手続が目白押しなわけです。

なので、そもそもアメリカで資金調達を考えているのであれば、将来そんな煩わしいことに巻き込まれるよりも、最初からDelaware corporationで設立してしまおう、というのが合理的な考え方になる訳ですね。

他にも、Delaware corporationを選ぶメリットとして、教科書的には、

会社法を専門に扱っている裁判所があり、迅速で判例も多いので、予測可能生が高い

ですとか、

デラウェア裁判所は、きちんとやるべきことをやっていればDirectorsのビジネス判断を尊重してくれる傾向にある

といった理由が挙げられるのですが、スタートアップのメッカであるここシリコンバレーで実務をしていると、やはり一番大きな理由は、「投資家目線」なんだろうなと感じるところです。

長くなってしまったので、続きはまた今度ということで。
シリコンバレーは、2ヶ月ぶりの大雨に見舞われていますが、今週もがんばっていきましょう。

竹内信紀




2015年2月1日日曜日

アメリカでの会社設立(1)

アメリカでビジネスを始めようとする場合、どの種類の法人を作るのかということをまず検討することが多いのではないでしょうか。

もちろん、

法人なし、身1つで立身出世じゃ!!!

と考える方もいらっしゃると思いますが、その場合、いざ失敗した時に、負債等のリスクを全面的にその個人の方が追わなければならないことになるため、あまり合理的な手段ではないと思います。

ということで、法人を作ろう!という話になるのですが(法人を作る意味等について知りたい方がいれば、この記事と同じようなカジュアルな論調で説明しますのでご連絡くださいませ)、日本にもたくさんの種類の法人があるように(例:株式会社、合同会社、組合、有限責任組合)、アメリカにもたくさんの種類の法人があります。

よく検討の遡上にあがってくる法人としては、
Corporation
LLC (Limited Liability Company)
Partnership
LLP (Limited Liability Partnership)

といったものがあり(厳密には「法人」とは言えないものも含んでいますが、メンドクサイので「法人」と言っておきます。ご容赦を。)、さらに、①の派生法人(?)として、

SCorporation(これとの対比で、①のことをC-Corporationと呼んだりします。)

というのも、ちらりと顔を覗かせたりするかもしれません。

ということで(どうゆうことで?)、まずはCorporationから。

Corporationは、日本でいうところの株式会社です。もっとも典型的な法人といって良いと思います。日本における株式会社とほぼ同じと考えてもらって問題ないと思いますが、日本の株式会社が、取締役会非設置/設置会社だの、監査役設置会社、監査等委員会設置会社(留学中にいつのまにかできてましたね)だの、新株予約権だの社債だの、かなり緻密に作られていますが、こちら(代表選手はデラウェア州)のCorporationは、そんなまどろっこしい区分はありません。取締役は1名からOKですし、仮に取締役が1名であってもBoard of Directors(取締役会)というものは存在します。もちろん、Board of Directorsの構成とか、権限とか、株式の譲渡制限とか、そういった細々したものはCeertificate of Incorporation(日本でいう定款)やBylaws(日本での位置付けが難しいですが、さしずめ、取締役会規程や株式取扱規程といったところでしょうか)で定めることもできますが、デフォルトのCorporationは、一種類しかなく、その意味で極めて単純です(余談ですが、お世話になっているof counselと日本の会社絡みの案件について話をしたとき、「取締役会設置会社と取締役が複数名いる取締役設置会社で何が違うのさ?別に取締役1名だってそれをBoard of Directorsって呼んだって良いじゃん!」みたいな話になり、ムムム…と思いました。)。

このような点や、登記制度がない(後日説明しますが、デラウェアのCorporation設立に必要なものは、Certificate of Incorporationのファイリングだけです。)ことをもって、「アメリカの会社制度は日本の会社制度よりも柔軟」と評価されたりするのかもしれません(個人的な感想ですが、「柔軟」というよりも「適当」といった方が的を射ている気がしますが。いまいち、理論的に「?」がつくものが多い気がするんですよね。。。)

このCorporationと他の法人を比べた時にもっとも大きく違う点は、「二重課税」の問題ということになると思います。二重課税というのは、オーナーである株主にお金がいくまでに、会社が収益を上げた時点で法人税が課され、さらに、株主に配当する段階でその配当に対しても課税が生じるということを意味します。これが、他の法人ですと、オーナー個人だけに税金が課されることになったり、法人の損益がオーナーにパススルーされたりするため(詳しくは後日)、法人レベルでは課税されない →「一重課税」→「メリット大」みたいな説明がよくなされる訳です。

しかし、これ、特にスタートアップに関しては、まったく当てはまらない議論です。相方が以前に言っていた通り、スタートアップで配当なんかする会社は皆無ですから、したがって、「Corporationにしたから2番目の課税が生じちゃうな〜。じゃ、他の法人にしよっかな〜」なんて、基本的に考える人はいないんです。となると、Corporationも他の法人とあまり変わりがないことになりますね(もちろん、「一重」といっても、法人レベルか個人レベルかの違いはあるわけで、後者にメリットを感じてCorporation以外の法人を選択することはあり得ます。この点もおいおい)。実際のところ、シリコンバレーのスタートアップに関して言えば、90%以上(99%と言っても良いかもしれません)がCorporation、それもDelaware州のCorporationとして設立されています。

なぜ?

長くなってしまいましたので、この点については、また次回ということで。
宿題が日に日に溜まっている気がしますが、ま、気にしな気にしない。

もう2月ですね。皆さん、今週もがんばっていきましょう!!!
竹内信紀