(4)クライアント向けコメント
日本の、しかも大手と言われる事務所で実務をやっていると、「 クライアント向けコメント」を契約書なり、作成・ 修正中の書面に書いて、クライアントからの質問に答えたり、 クライアントに検討を促したり、条項の趣旨を説明したり、 なんやかんや色々書いて、 ついでに目立つようにハイライトつけて… なんてことをするのが当たり前になってくるのですが、これ、 意外と手間のかかる作業です。コメントが記録に残るし、 正確性も担保できる面もあるので、良い面もあるのですが、 その一方で、間違いなく手間はかかりますし、 クライアントとのやりとりも1回(もしくはそれ以上に) 増えることも多い気がします。
で、シリコンバレーのLaw Firmですが、 基本的にそんなしちめんどくさいことはしません。 時間もかかるし、クライアントの方も「 検討してくれって言われても、ぶっちゃけよく分からんよ!」 ということも多いらしく、 条項に関していくつか選択肢があったり、 数字を入れなければならない時も、[ ]とかつけてクライアントに投げるのはご法度です。
基本的に、こちら側で、 これまでの実務経験を踏まえてクライアントに最適と思われる条項 に仕上げ、数字を([ ]とか一切つけずに)入れて提示し、 クライアントから特にコメントがなければ、 そのままその案で突き進みます([ ]をつけるのは、日付だとか、 金額がまだ当事者間で決まっていないとか、 そういった形式的なものがほとんどです。)。
質問があった場合でも、 たまにワードのコメント機能を使ってコメントバックしてくるクラ イアントもいらっしゃいますが、基本的には、 簡単な単発の質問であればメールで済ませ、 数が多かったりまとめて議論したほうが良いような場合には、 電話して一挙に解決して、 その結果を書面に反映して終わらせます(その書面の中に、【 お電話でお話させていただいたとおり・・・(云々)】 みたいなコメントはもちろんつけません笑)。
どちらのやり方がいいのかは、 一概には言えないのかもしれませんが、Law FirmがビジネスとしてStartupのリーガルサポートを継 続的にやっていくためには、「ある程度数をこなす必要がある」 という命題が、大前提としてあると思います。それに、「Star tupの人も(多くの場合)経験がない。だってStartupだ もの。」という小前提を掛け合わせると、 日本で日常的にやっていた実務対応は、 やはり現実的ではないなと感じるところです。
結局のところ、ケース・バイ・ ケースという話に落ち着くのかもしれませんが、「 どうやって合理的に仕事をこなしていくか」という視点は、 忘れないようにしたいところです。
竹内信紀