2015年2月19日木曜日

Teva Pharmaceuticals v. Sandoz

米国連邦最高裁は、1月20日、クレーム解釈に関する第一審の判断を上級審がレビューする基準について、判例変更を行いました。Teva Pharmaceuticals v. Sandozです。 


今回の判決内容(ざっくり):
クレーム解釈に関する地裁判断のうち、事実認定にかかわる部分についての上級審のレビューの基準は、De Novoレビュー(ゼロから判断し直す)ではなく、Clear Errorの基準(明白な過誤がない限り原判断維持)である。
クレーム解釈は究極的にはやはり法的な判断であるし、SpecificationやProsecution History等の内的証拠のみに基づいてクレーム解釈判断をした場合には、原審のその判断は法的判断そのものであって、これまでどおりDe Novoレビューの対象となるが、Background Scienceや、特定の時期における用語の意味といった外部証拠による事実認定は、上級審に対して一定の拘束力がある。(Breyer最高裁判事)


(1) クレームとは、特許発明を言葉で表現したもの。特許という独占権をどこまで広く保有できるのか、相手の製品が自分の特許を侵害しているといえるか否か、はクレームの文言で決まります。クレーム文言が必ずしも明確ではないとき、裁判ではその「解釈」が争われることになります。
(2) 米国では陪審裁判を受ける権利が保障されています(憲法修正第7条)。簡単に言うと、事実認定は陪審が、法律上の判断は裁判官が行います。クレーム解釈は事実認定なのか、法律上の判断なのかが本件の1つのポイントです。
(3) 米国では日本と同様、三審制です。地裁(第1審)の判断に不服があるときは、控訴審(第2審)に控訴できます。控訴裁判所が、控訴された地裁の判断をどのような基準でレビューするか(ゼロから判断し直すのか、地裁判断を尊重する手法をとるのか)は、争点が事実認定なのか、法律上の判断なのか、それによって変わってきます。


7対2の判断でした。
多数意見の理由付けとしては、前提となる事実判断とクレーム解釈という法律的判断は切り分けられること、地裁の裁判官のほうが事実認定プロセスの全部に関与しており、基本的に書面審査をするだけの控訴審の裁判官よりも、科学的な問題を理解する機会に恵まれていることなどを挙げています。
反対意見は、クレーム解釈の前提となる事実関係の認定は、合意の有無等の過去の事実の認定(要するに普通の事実認定)とは異なることや、当業者が特定の用語についてどのような意味のものと理解するか(本件の「事実認定」はこれに関わるものでした)についてはクレーム解釈プロセスの一部に過ぎないことなどを理由として述べています。
それぞれ筋が通っていて、議論もかみ合ってて、面白いです。
以下では、特許訴訟の唯一の控訴審である、連邦巡回区控訴裁判所(United States Court of Appeals for the Federal Circuit、通称CAFC)をCACFと記載します。日本の知財高裁みたいなものです。


なお、連邦民事訴訟法(FRCP)上、上級審によるレビューの基準は以下のようになっています。
(A) Questions of Law → De Novo(上級審の判断が原判断に置き換わる=ゼロから判断し直す)
(B) Questions of Fact in non-jury trial → Clear Error(明白な過誤がない限り原判断維持)
(C) Questions of Fact in jury trial → Whether a reasonable jury could have reached the same conclusion(合理的陪審が同じ結論に至る限り原判断維持)
(D) Mixed questions of Law & Fact → De Novo
(E) Discretionary matters → Abuse of discretion(裁量の濫用がない限り原判断維持)


今回の判決は、約16年にわたるDe Novo基準(A)を一部においてひっくり返し、原審判断を大きく尊重する(B)への移行を宣言したことになります。しばらくはこれでいくのだろうと思われるので、実務上の影響は小さくないと思われます。とりあえず、第1審の重要性が結構増すことになりますから。まずは、クレーム解釈に関する外部証拠(Expert Witnessなど)の利用が増えることが考えられます。あと、地裁の裁判官の立場に立ったとき、「控訴審で俺のクレーム解釈がひっくり返されたくないし」ということでExpert Witnessの(申請のみならず)採用が増える可能性もあるかも?しれません。マークマンヒアリング(後述)後の和解が増えるかも、というコメントも見られます。

また、CAFCは、2月4日、PTAB(Patent Trial and Appeal Board 特許商標庁審判部)のトライアルでのクレーム解釈の判断(日本の特許庁の審判のようなもの)についても、この新判例とほぼ同様の基準でレビューを行うことを明言しました(In re Cuozzo Speed Techs., LLC, No. 14-1301 (Fed. Cir. 2015))。同様の影響があることが推測されます。というか、ある意味影響は2倍ですね。

なお、1月26日には、早速連邦最高裁が、この新判例の基準をもとに3件の特許関連事件を差し戻しています。
CAFCの裁判官も、昨日までDe Novoだったものが、今日から一定程度原審判断に拘束されるからねと言われて、大変ですね。



もともと、陪審制をとる米国では、特許クレームの解釈が法律問題か事実問題かという古くて新しい論点があったわけで、それを決着したのが、1996年のMarkman v. Westview Instruments判決(「クレーム解釈は陪審じゃなくて裁判官がやるよ」)、そして1998年のCybor v. FAS Technologies判決(「事実認定と法律判断のMixじゃなくて純法律論だからDe Novoだよ」)でした。

このようにルールとしてはすっぱりと割り切った判決が出ていましたが、実務上はあんまし納得感がないというか、それぞれの判決の理由付けがあっちに行ったりこっちに行ったりしてたこともあって、まだまだ議論(不満?)は続いていたというのが実情だったようです。たとえば昨年のLighting Ballast Control v. Philips Electronics North Americaの裁判でも、De Novoはおかしいじゃないかということで、CAFCの大法廷も議論が割れていました(当時の結論としては判例変更しませんでしたが、この件は1/26に最高裁が差し戻した3件のうちの1つのようです)。
Markman判決でSouter最高裁判事による「クレーム解釈はMongrel Practice(事実認定と法律判断の雑種的プラクティス)」というくだりがありましたが、巡り巡って結局そこに戻ってきたような感じがします。

若干余談になりますが、このMarkman判決に名を借り、裁判所でクレーム解釈について弁論する手続をマークマンヒアリングと呼び、当然のことながら、第1審の中でも非常に重要な期日なのですが、だいぶ前に私がマークマンヒアリングを見たとき、そこでよくしゃべる連邦判事(自分では歩けないくらいの高齢の女性判事でした。ちなみに米国の裁判官は私が見た限り本当によくしゃべります)は「クレーム解釈は最後陪審が決めますから(ぷんすか)!」みたいなことを(そこそこのドヤ顔で)言ってました。しかしそれは誤りですね。

連邦地裁の裁判官が特許訴訟に精通していないことがあるということはたまに言われることで、最高裁への上告が受理される数が少ないこともあわせて考えると、とにかくCAFCの役割が大変重要だということを再確認できます。と同時に、今回の判例変更、クレーム解釈について上級審のDe Novoレビューを一部放棄して本当にいいのだろうか、と思ったりもします。

波多江崇 

2015年2月16日月曜日

アメリカでの会社設立(4)

さて、

どうやってDelaware Corporationを設立するか

という点ですが、日本で株式会社を設立する根拠が会社法にあるように、Delaware Corporateionを設立する根拠も、当然デラウェア州の会社法、すなわち、デラウェア州のGeneral Corporation Lawにあるわけです。

で、その General Corporation Lawなんですが、これが大変読みにくい(そもそも、アメリカの法律って、全体的に整理されてなくて読みにくいんですが…)。別に読まなくても問題なく会社は設立できますし、実際、アメリカのCorporate Lawyerと言われる弁護士がどれだけGeneral Corporation Lawを正確に把握しているかというと、実は「?」がつくことも多いような気もするんですが、それはさておき、とりあえず、最初くらいは法律から始めてみようと思います。

General Corporation Law106条には、以下のとおり規定されています。

"Upon the filing with the Secretary of State of the certificate of incorporation, [] the incorporator [] shall, from the date of such filing, be and constitute a body corporate, by the name set forth in the certificate []."

「略」の多さから分かっていただける通り、こんな基本的な条文からして早速読むのがメンドクサイんですが、要するに、「Certificate of incorporation をデラウェア州のSecretary of Stateにファイリングした日から、当該Certificateに定められた名称で会社が設立されますよ。」と書いてあるわけです。

Certificate of Incorporation、日本語に訳すと「定款」。
つまり、定款をデラウェア州に登録すればそれで会社設立は完了です。

ちなみに、「定款」を和英辞典で検索すると、「Article of Incorporation」というのも出てくるかと思いますが、これは、カリフォルニア州(もしかしたら他の州でも)の会社法で使われている表現であり、デラウェア州では「Certificate of Incorporation」と言っているというだけに過ぎません。表現は違えど指しているモノは一緒、と理解してもらえれば良いと思います。

で、デラウェア州の定款ですが、何を規定しなければならないかというと、必須事項としては、
(1)     会社の名称(the name of the corporation
(2)     デラウェア州内における会社の住所とエージェントの名称(the address [] of the corporation's registered office in this State, and the name of its registered agent at such address)
(3)     会社の事業の目的(the nature of the business or purposes to be conducted or promoted
(4)     発行可能株式総数及び一株あたりの額面価格(the total number of shares of stock which the corporation shall have authority to issue and the par value of each of such shares
(5)     設立者の氏名及び郵送先住所(The name and mailing address of the incorporator or incorporators
となっています。

(1)は特に問題ないと思います。強いて言えば、Incorporation (Inc.)ですとかLimited (Ltd)ですとか、そいった会社であることを示す所定の文言を入れなければならないといった点でしょうか(これは、日本でも同じ規制がありますね。)。

(3)ですが、これも、実務上は、「法律上認められている一切の活動」といったような包括的な内容でOKとされていますので、問題ないでしょう(日本は、一昔前まで具体的な事業目的を定めなければならなかったのですが、今はその実務が変更され、デラウェアと同じような感じになってますね)。

(4)ですが、発行可能株式総数は、その名の通り、会社が発行できる株式の最大数を示すものです。シリコンバレーですと、通常、1000万株や1500万株でスタートするのが一般的です。Par valueというのは、株式の「額面価格」で、要するに、株式を発行する際の最低価格を示すものです。株式を発行する際には、この価格を下回ってはいけないという制約がつくわけですが、シリコンバレーでは、この価格が$0.01とか$0.00001に設定するのが通常のため、ほとんど意味のある数字ではありません。ちなみに、一株あたりの実際の購入価格を示す際に用いられる「per value」とは、微妙にスペルが違う上に全く意味が違いますので、ご注意をば。

(5)ですが、これはそのまんまの意味です。別に外国の住所だって問題ありません。むしろ、日本人が日本でDelaware Corporationを設立する場合には、ここが日本の住所になることが通常かと。

で、後回しにしてきた(2)ですが、これについてはまた後ほど。別に今書いてもいいんですが、ちょっと長くなってきたので、分けて書こうと思います。

でわまた。
竹内信紀

2015年2月13日金曜日

アメリカでの会社設立(3)

前回、どの州でCorporationを設立すべきかという点に関して、

②特にアメリカでの資金調達を考えておらず、純粋な現地子会社に過ぎないのであれば、California corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)


と書いたかと思います。

前回触れられなかったので、今回はこの点について。

Delaware corporationで設立する最も大きな理由が「投資家目線」であることは、前回説明した通りです。

そして、「純粋な現地子会社」の場合、この「投資家目線」というのは、全く必要ない訳です。この手の子会社の場合、基本的には、日本の親会社が必要な資金はすべて入れてくれることが想定されてますからね。

では、



(B)会社法を専門に扱っている裁判所があり、迅速で判例も多いので、予測可能生が高い
(C)デラウェア裁判所は、きちんとやるべきことをやっていればDirectorsのビジネス判断を尊重してくれる傾向にある

といった理由がどれほど当てはまるかというと、これも正直「?」がつくことが多いのではないかと思います。日本の親会社が100%親会社として君臨している以上、会社法絡みで揉めごとになることも少なくなりますし、株主代表訴訟のさらされるリスクも低くなります。


ということで、「純粋な現地子会社」については、積極的にDelaware corporationを選択する理由が乏しくなってくるわけです。


そして、Delaware corporationを設立することによって生じるFranchise taxの存在を考えると、デラウェア州で積極的にビジネスを展開するのでない限り、Delaware corporationで設立することがデメリットとなる可能性があります。


Franchise taxというのは、2010年8月からデラウェア州でDelaware corporationに対して課されるようになった税金で、言ってしまえば、デラウェア州でCorporationを設立したことに対する「みかじめ料」みたいなものです。


この税金、最小で年間$175、最大で年間$180,000と、かなり大きな振れ幅があるのですが、基本的には、Authorized shares(発行可能株式総数)をベースに計算されます。


具体的には、発行可能株式総数が


5千株以下 → $175

5千株超1万株以下以下 → $250
1万株超 → 1万株ごとに$75

といった感じです。


これとは別に、1株あたりの株式価値をベースに計算する方法もあるのですが、気前の良いことに、発行可能株式総数ベースの計算と1株あたりの株式価値ベースの計算とで、「どちらか低い方」を選べば良いことになっています。


となると、日本に100%親会社があって、発行可能株式総数は100株とかせいぜい1000株の会社の場合には、Franchise taxはせいぜい年間$175だったりするわけですが、そうは言っても、あえてDelaware corporationにする積極的な理由も無いのに年間$175もみかじめ料を払うのはちょっとね・・・ということで、基本的には、「純粋な現地子会社」については、California corporationでいいんじゃないですか?とアドバイスを差し上げているわけです。


それに、Delaware法人がカリフォルニアでビジネスする場合には、Qualification to do businessというのをカリフォルニア州から得なければならず、そこでまた余計な時間と費用が生じます(これも、しっかりした親会社が日本にあるような会社からすれば些細なものなんですけどね)。ということで、やっぱり「純粋な現地法人」にはCalifornia corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)がおすすめだよ、ということになりそうです。


余談ですが、このデラウェア州のFranchise tax、実は、「純粋な現地法人」よりも、スタートアップの方により影響があります。というのも、シリコンバレーのスタートアップは、通常1000万株や1500万株の発行可能株式総数で設立されるからです。この株数を前提にみかじめ料を計算すると、あっという間に$180,000に!おいおい、そんな額、スタートアップには負担が大きすぎますって!!


…でも大丈夫です。先ほど言った通り、1株あたりの株式価値をベースに算定する方式が別に用意されていて、こちらの最低税額は$350。で、スタートアップはもちろんこの$350の税額に収まる訳です(こちらの計算式については、おいおい、必要に応じて)。


ということで、スタートアップの皆さん、(年間$350のみかじめ料も結構高いですけど)安心してデラウェア州でCorporationを設立しくださいね!

次回からは、具体的な設立手続きについて入り込んでいきたいと思います。
竹内信紀






2015年2月11日水曜日

FTC、IoTに関するレポートを公表

1月27日、FTC(連邦取引委員会)は、Internet of Thingsとプライバシー・セキュリティに関するレポートを公表しました。
結構みんなが待ってたヤツです。

リリースはコチラ
レポート自体はコチラ

インターネットにつながる機器は、2015年には250億個、2020年には500億個に上ると予測される、といって始まるこちらのレポート。
ページ数はExecutive Summaryを除けば55ページ。日本の役所が出してるのよりお手軽です。内容も読みやすくとっつきやすいです。

IoTに関する政府の公表物はこれまで多くはなかったし、プライバシーの総本山の1つであるFTCのまとめということで、現時点の議論の到達点を記録する、最大公約数的なものとして、そこそこの画期的さと相当の重要性を持つレポートだと思われます。

なお、このレポートは2013年11月19日に開催されたワークショップ(WS)での議論のまとめという枠組みを取りつつ、FTCとして考えるベストプラクティスを織り込んでいるということ(このベストプラクティスという表現はクセモノです。)に留意が必要です。あと、基本的にBtoCを念頭においていて、BtoBは対象外になっていることも初めに断りが入っています。



まず、Executive Summaryの部分を簡単にまとめてみます。以下意訳ご容赦ください。

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1.Security 
データセキュリティに関して推奨されるベストプラクティスは以下のとおり:
 (1) Security by Design=開発の一番最初の段階から情報セキュリティの構築をスタートさせなければならない。これには、以下を含む。
   a) プライバシー又はセキュリティアセスメント
   b) 取得・保有情報を最低限に抑える(Data Minimization)
   c) 製品ローンチ前にセキュリティ対応をテストする、を含む。
 (2) 従業員のトレーニング
 (3) 合理的セキュリティを維持できる外部委託先の利用
 (4) リスク発見時の対応
 (5) アクセスコントロール
 (6) 製品のライフサイクル全期間にわたるモニタリング 
2.Data Minimization 
 賛否はあったが、基本的には、収集・保有する情報は減らすべきだし、不要になったデータは消去すべき。これにより、事業者の内外からのデータ窃取のターゲットになりにくくなるし、目的外・想定外データ使用も減るだろう。
 もっとも、将来におけるデータ活用によるベネフィットとプライバシー保護のバランスを考えたとき、ここで推奨するData Minimizationはフレキシブルなものであり、非匿名化等の複数のオプションを与えるものだ。 
3.Notice and Choice (後述) 
4.立法 現時点での、IoTに特化した立法は時期尚早だ。もっとも、FTCとしては、連邦議会に対し、情報漏えい時に、当局の法執行手段と、消費者に対する通知を提供する、強力かつ柔軟、そしてTechnology-Neutralな連邦法の制定を改めて提案する。
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次に、Executive Summary以外で小生が気になった点を中心にピックアップしてみます。

P10 -14 (Benefits & Risks>Risks)

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IoTに関わるリスクというのは、以下の3つに整理できる。
1 不正アクセスと個人情報の誤使用
2 他のシステムに対する攻撃を容易にする(例、DoS攻撃)
3 安全上のリスク(例、ネットにつながったインスリンポンプや自動車を誤作動させる)
そして、これらのリスクは、以下の2つの理由により、通常のパソコン等の場合よりも、対応が難しい:
1 IoT市場に参入する会社はセキュリティ問題についてあまり経験がないかもしれない
2 IoT機器は廉価で使い捨てのものも多いので、製造後にアップデートやパッチ適用等によって対応することが難しいし、できたとしても、消費者はそれに意を払わない。そもそも、Low-Endな機器の開発会社は、そのような継続的サポートやソフトウェアアップデートを行う経済的インセンティブがないかもしれない。
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   (でも、それは問題だろう。)



P19 - (Application of Traditional Privacy Principles>Summary of WS Discussions)

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特にData Minimizationと、Notice & Choiceに関して、現在のFIPPs(Fair Information Practice Principles)をIoTにも同じく適用できるのかについて議論がなされた。
Data Minimizationは、収集・維持するデータを制限し、不要になったデータを消去するという考え方であるが、若い会社にとってはどのデータを制限すればいいか考えなければならないことでイノベーションが阻害される、あるいは、IoTのポテンシャルそのものを制限するものだとの懸念が表明された。目的の特定や使用制限のルールは厳格すぎるとの意見も出た。
Notice & Choiceに関しては、IoTにおけるデータ収集のユビキタス性からすれば、現状のルールは実際的ではない、事業者にとっても消費者にとっても毎回同意をするのは負担が大きい、などの意見も出た(たとえば運転中にNoticeは読めない、など)。また、スクリーンがない又は非常に小さい機器については、Noticeを提供すること自体非常に難しい。
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P39- (Application of Traditional Privacy Principles>Commission Staff's Views and Recommendation for Best Practice)
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新しいテクノロジーのもとでも、Notice&Choice(≒通知と同意)は重要だ。IoT時代には、ユビキタスなデータ収集、そしてインターフェース(≒ディスプレイ等)の不存在により、従前のNotice & Choiceのプラクティスはなかなか難しい面があるが、実施は可能である。まず、全てのデータ収集にChoiceを提供しなければならないわけではない。このことはFTCも認める。 
具体的には、事業者は、もともとの取引や消費者との関係性と矛盾しない/整合する実務(practice that are consistent with the context of a transaction or the company's relationship with the consumer)のためにデータを収集又は使用する場合には、事前にChoiceを提供することを強制されない。 
例えば、A社が提供する、あるスマート・オーブンを考えよう。このスマート・オーブンは、アプリと連動しており、アプリを通じて家の外からでも操作ができる。A社が、消費者のオーブン使用に関する情報を、オーブンの温度センサーの性能向上や当該消費者に別の商品を勧めるのに使用する場合、これらの使用について、A社は消費者にChoiceを提供する必要はない。消費者との関係性と矛盾しない/整合するからだ。 これに対し、もしA社が消費者のパーソナルデータをデータブローカーや広告ネットワークに提供する場合、そのような提供は消費者との関係性と矛盾する。したがって、消費者にChoiceを与え(て同意を得)なければならない。  
ユーザーインターフェースがない機器に関しては、実務的にChoiceを提供するのに困難を伴うが、WSでは以下のような手法が議論された。 
■Choices at Point of Sale
 製品販売時におけるChoice提供
■Tutorials
 プライバシーセッティングに関するビデオチュートリアル(例、Facebook)
■Codes on the Device
 製品にQRコードを添付してウェブサイトへ誘導→Choice提供
■Choice during Set-up
 セットアップウィザードにてChoice提供
■Management Portals or Dashboards
 アプリ等によるダッシュボードでプライバシー設定等を可能に
■Icons
 簡単に設定等を操作できるアイコン又はボタン
■”Out of Band” communications requested by consumers
 Eメールやショートメールの活用
■General Privacy Menus
 プライバシー設定をいくつかのパッケージにする
 (プライバシーレベル低/中/高から選ぶようにして、内容につき別途明確な説明を提供するなど)
■A User Experience Approach
 例えば、2個以上のIoT機器を提供しているメーカーは、1つの機器についての消費者の好み (例、私の情報は一切第三者に提供してはいけない)を別の機器についてもデフォルト設定にする。また、消費者の過去の行動パターンから、新たに追加された機器について、将来のプライバシー設定に関する「好み」を予測する。このように、消費者の行動から事業者が学習していく方法。
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「新しいものが世の中に生まれ既存のルールでは扱いきれなくなったとき、次のステップとして必要なのは技術を「だめ」というのではなくルールを変えていくこと」が、日本から新しいイノベーションを生み出すために必要だという話(上田学氏)を目にしたばかりだったのですが、そういう意味では本レポート、息苦しすぎるやん、という印象を持った方もいるかもしれません。WS当日もそのようなアツイ意見が結構あったように見受けられます。

とはいえ、Security by DesignとData Minimizationについては、(いずれもこれまで見たり聞いたりしたことのある内容ではあるものの)個人的には、ここまで明確に大正義として掲げられたことが重要なことなのだろうと感じられます。今後、この2つの原則の違反によって生じるリスクの「質」が格上げされることが予想されます。
「ベストプラクティス」とは、聞いたことのある日本語です笑。このレポート自体は、法令ではなく、法的な拘束力があるわけではありません。したがって、遵守しなくてもそれだけでFTCに怒られるということはないのでしょう。ただし、このベストプラクティス未満の対応と、不公正(unfair)あるいは欺瞞的(deceptive)なビジネス手法とあいまった場合、FTCのエンフォースメントが発動される可能性は高まったといえるかもしれません。
近い将来少なくとも米国では、本レポートに記載のベストプラクティスが重要なエンフォースメントの基準あるいは着眼点となるかもしれないという認識が必要だと思われます。

Notice&Choiceについては、サービスや製品のみならず、どうやって通知と同意を実施するか、それについてもクリエイティビティが求められているなと。通知と同意取得は基本的にどの国でも問題となることですので、本レポートの内容は、ベースラインとなるプラクティス例として、日本の事業者も知っておかなければならない内容じゃないかなと思います。

IT、プライバシー、FTC、などなどについては、今後も(長文にならないように)書いていきたいと思います。

波多江崇 (マイペースに書いてまいります。よろしくお願いいたします。)


2015年2月9日月曜日

「シリーズA」を定義する? (2)

前回の続きで、「各ラウンドで調達した資金で何をどこまでやるべきか?」ということを考えてみます。前回までの到達点は、

シリーズAとは、企業が直面する第1回の(外部からの)大規模な資金調達ラウンドのことで、歴史的に「シリーズA」という名称のPreferred Stockを発行することが(米国で)多かったことからこのように呼ばれている

という感じでした(MVPならぬMVT=Minimum Viable 定義ということで、若干の不正確はご容赦ください笑)。

今回は、更にこれに実質的な視点を持ち込んでみます。すなわち、「Seed Moneyで至るべき到達点、Series A Moneyで至るべき到達点」はどんなものなのか??を探してみます。

まずはこちら。Twitterに対するExitを経験している起業家のEladさんが2011年に書いたブログでは、

・『製品をスケールさせて、ビジネスモデルを確立する』のがシリーズAで調達した資金を用いてやるべきことであり、典型的には$7M-$15Mくらいを調達する。
・『ビジネス自体をスケールさせる』のがシリーズBで調達した資金を用いてやるべきことであり、典型的には$7M-数十Mくらいを調達する。
・『成長を加速させ、ビジネスを国際化し、M&Aで他の企業を買ったりする』のがシリーズCで調達した資金を用いてやるべきことであり、数十~数百Mを調達する。

なんてことを仰っています。これ、2015年でも同じニュアンスなのでしょうか。

今回ご紹介したいのは、著名エンジェル投資家のJason Calacanisさんのブログです。1970年生まれのJasonさんはNetscapeなどドットコム・バブルを牽引したインターネット関連企業を経たあと、超名門ベンチャーキャピタルであるSequoia Capitalなどを経て、2009年からOpen Angel Forumというエンジェル投資家と起業家を結びつけるフォーラムなどを主宰しています。その投資先も、Tumblr、Uber、Evernoteなど著名企業が含まれている、影響力のあるエンジェル投資家の一人ですね。そのJasonさんは、

・時代によってそれぞれのラウンドで調達する資金を使ってやるべきことは変わってきている。

・それぞれのラウンドで調達できる額が大きくなってきている反面、やるべきことが前倒しで要求されるようになった。

・特に、以前であればSeries A/Bでやるべきことと考えられていたことが、リーン・スタートアップの普及により、かなり初期の段階で実践しておくべき事柄に変わりつつある

ということを仰っています。以下の図1をご覧下さい。Jasonさんの仰っているこのモデル、シリコンバレーのVCさんの間ではかなり共通認識に近いものがあるようです。

図1 各ラウンドで調達した資金でやるべきこと(2015年版:Jason Calcanisさんのブログを基に作成)

リーン・スタートアップについては私は専門家ではありませんし、巷間優れた書籍やブログがあるのでそちらを見て戴いた方がいいのですが、特にPre-fundingの段階でMVP(Minimum Viable Product。エリック・リースの原著では "The MVP is that version of the product that enables a full turn of the Build-Measure-Learn loop with a minimum amount of effort and the least amount of development time."とされていますが(Eric Ries, The Lean Startup, at 77 (Crown Publishing 2011))、邦訳では「実用最小限の製品」と訳されているようです。)まで作れ、と考えられているという部分はなかなかのインパクトがありますよね。

こうやって考えてみると、以前のポストで書いた「シード段階でのバリュエーションが上がり過ぎている?」という話も、昔だったらシリーズAあたりでついたはずのバリュエーションがシード段階で付いているだけ?と考えると、納得の行く話でもあります。勿論VCからみると、ビジネスとして投資をスケールさせるのが難しくなっていくのに変わりは無いため、善し悪しだとは思うのですが。

というわけで長々とお話してきましたが、このJasonさんの考えを取り入れ、2015年版シリーズAを定義しますと、

(1) 企業が直面する第1回の大規模な(外部からの)資金調達ラウンドであって、
(2) ローンチされたMVPをスケールさせるために用いる資金を調達するものであり、
(3) その対価として、歴史的に、「シリーズA」という名称のPreferred Stockを発行することが(米国で)多かったことから、こう呼ばれているもの

ということになりそうです(これは最新過ぎる、ということであれば、(2)を「ローンチされたMVPに牽引力を持たせ、スケールさせるために用いる資金を調達するものであり」に変えてみるといいのかな?)。

もちろん以上の議論はアメリカのものであって、日本のスタートアップにそのまま持ち込まれる話ではありません。ただ、日本のVCの活動にもシリコンバレーのVCの考え方は一定程度影響を及ぼすと思いますので、近い将来、同じようなことが日本で言われることもあるかもしれませんね(個人的には、勿論シリコンバレー流を参考にすべきは参考にし、しかし日本の文化に合わないものは無理して取り入れるべきではない、と思っていますが。)。JasonさんのブログはStartup界隈のお話がとても面白く語られているので、もしご興味がありましたらまた読んでみてください。

珍しく宿題を一つ片付け、肩の荷が下りた気分でございます笑 さぁ2月も中盤戦!今週も頑張って参りましょう!

2015年2月8日日曜日

アメリカでの会社設立(2)

アメリカでCorporation形態で会社を設立しようとした場合、次に考えなければならないのは、

どの州でCorporationを設立するか

という点です。

アメリカでは、アメリカ合衆国憲法で連邦レベルで定めるべしとされている事項以外の事項は、基本的に州の法律に立法が委ねられており、会社関係の法律もしっかりと州法に委ねられています。

そのため、Corporationも州ごとの立法に基づいて設立され、例えば、デラウェアで設立された会社はDelaware corporation、カリフォルニアで設立された会社はCalifornia corporationと言ったりします。

さて、私が勤務しているWSGRはカリフォルニア州にありますので、日本の方からアメリカでの会社設立の相談を受ける場合、基本的には、California corporationかそれともDelaware corporationかという相談を受けることになります。

そして、この相談に対するアドバイスは、

①スタートアップ等で、将来、アメリカでの資金調達を考えているのであれば、Delaware corporation

逆に、

②特にアメリカでの資金調達を考えておらず、純粋な現地子会社に過ぎないのであれば、California corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)

ということになります。

では、①スタートアップ等で、将来アメリカでの資金調達を考えている場合には、なぜDelaware corporationがベストなのでしょうか。

答えはいくつかあるのですが、もっとも重要なのは、

VCを初めとする投資家が、Delaware corporationの実務に慣れているから(もっと言えば、他の州のCorporationについては、正直良くわかっていないから)

ということになります。

めちゃくちゃ投資家目線ですが、お金を入れてくれるのは投資家なんですから、これは仕方のないことです。

中には、Delaware corporation以外のcorporationであっても投資してくれるところもありますが、多くの場合、投資段階でCalifornia corporation からDelaware corporationへの鞍替えを求められます。運良く鞍替えしないまま投資を受け、事業を発展させることができても、いざIPOの段階になって、引受証券会社がDelaware corporationへの鞍替えを求めてくることも多いようです。

California corporationからDelaware corporationへの鞍替え自体は、デラウェアに100%子会社を作ってぶら下げて、その子会社(Delaware)と親会社(California)との間で逆さ合併するといった、僕がNYU留学時代に、偉大なるProf. John Slain(なぜ偉大なのかは、一部の友人が知っています。)から教わった方法そのまんまの方法が用いられるのが通常な訳なのですが、もちろん弁護士報酬もかかりますし、ある程度育ってしまった会社ですと、この逆さ合併が色々な契約のChange of Control条項にヒットすることになり、やれ通知だ、やれ同意の取得だ等々、大変メンドクサイ事務手続が目白押しなわけです。

なので、そもそもアメリカで資金調達を考えているのであれば、将来そんな煩わしいことに巻き込まれるよりも、最初からDelaware corporationで設立してしまおう、というのが合理的な考え方になる訳ですね。

他にも、Delaware corporationを選ぶメリットとして、教科書的には、

会社法を専門に扱っている裁判所があり、迅速で判例も多いので、予測可能生が高い

ですとか、

デラウェア裁判所は、きちんとやるべきことをやっていればDirectorsのビジネス判断を尊重してくれる傾向にある

といった理由が挙げられるのですが、スタートアップのメッカであるここシリコンバレーで実務をしていると、やはり一番大きな理由は、「投資家目線」なんだろうなと感じるところです。

長くなってしまったので、続きはまた今度ということで。
シリコンバレーは、2ヶ月ぶりの大雨に見舞われていますが、今週もがんばっていきましょう。

竹内信紀




2015年2月4日水曜日

「シリーズA」を定義する? (1)

Startup界隈のお仕事に関わっていると、毎日のように「●●はシリーズAで□□から●ドル入れてもらったらしい」とか「△△はまだシードラウンドでエンジェルを探しているけれど、なかなかうまく行っていないらしい」というようなお話を聞きます。

シリーズなんちゃら、という言葉や「シード」とか「ラウンド」とか、起業された方にとっては当たり前のこれらの言葉ですが、その正確な意味はどんなものなのでしょう。

まずGoogleで「シリーズA」と検索してみたところ、「マネー辞典」さんというウェブサイトで

『ベンチャー企業に対し、ベンチャーキャピタル等が出資する段階のひとつで、起業したばかりのスタートアップ企業に対してなされる投資のこと。製品の企画、開発やそれに伴う技術開発などに対してシリーズAの投資がなされる。』

と書いてありました。ふむふむ。お次は「投資用語集」というウェブサイト、

スタートアップ企業に対してベンチャーキャピタル等が出資する初期の投資ラウンドのことで、製品の企画、開発やそれに伴う技術開発などに対して投資がなされ、事業を開始し、技術開発によって製品を生み出すことが主眼となる』

と書いてありました。ふむふむふむ、この2つは似ていますね。これに対し、個人の方が書かれているウェブサイトでは、

『(シリーズAとは)開発試作を進めている段階。有望そうなアイデアであると、VCが参入する。優先株の発行を行う。』
とか
『VCの出資を初めて受ける段階をシリーズAとよぶ。』

などと書いてあるモノがみつかりました。むむむむむ。

で、では本場のサイトではどうでしょう(以下翻訳は意訳が含まれています。周辺の文脈も含めて検討されたい場合には原典をお当たりください。)。まずInvestopediaでは

新しい企業がシードキャピタル後に経験する最初の資金調達ラウンド。一般的には、会社の支配権が外部の投資家にオファーされる最初の機会。シリーズA投資はPreferred Stockの形で提供され、その後のエクイティによる資金調達があった場合に希薄化防止条項が入る場合が多い。』(意訳部分あり)

と書いてありまして(Preferred Stockを「優先株」と訳さない理由は以前の記事をご参照下さい。)、アーリーステージのハイリスク投資を行うVCやエンジェルが投資するものだよ、とされています。

弁護士のクセにWiki引用するな!とどこからともなくお怒りの声が聞こえてきますが、ブログなのでご容赦いただき、US Wikiで調べてみます。
「セリエA」…あれ?イタリアのサッカー?という罠をかいくぐりますと、

会社の最初の実質的なVC投資ラウンドの典型的な呼び名その呼び名は、当該投資の代わりに当該投資を行った投資家に対して発行されるPreferred Stockの名称による。』

と書いてあります。おおお!遂に語源らしきものが出てきました(Wikiですが笑)。

以上の流れから分かりますように、「シリーズA」という言葉には厳密な定義はなさそうですし、少なくとも法令用語でもありません。もう少し詳しく探ってみましょう。

・米国では、1回1回の募集株式の発行(増資)のことを「ラウンド(Round)」と称していた(1997年刊行の古い書籍ですが、名著『ベンチャー投資の実務』(MVC/三井物産業務部編、日本経済新聞社)13頁))。
・「Round」の使い方としては、時系列に順番をつけて1st Round/2nd Round…と呼ぶこともあるし、会社の成長段階に応じてシード・ラウンド、アーリー・ラウンド、などと表現することもある。
・これに対し、『その時に発行する株式の名称に応じて「シリーズA・ラウンド」などと区別することもある。』(前掲・ベンチャー投資の実務13頁)。すなわち、米国では、『条件の違う優先株を各ラウンドで次々と発行していくときは、発行順に「シリーズ(またはクラス)A、B、C…」などと、名前を付けて区別する』(前掲・ベンチャー投資の実務20頁)ことが行われてきたことから、当該ラウンドで発行する株式の名前をとって「シリーズA・ラウンド」と呼んでいたものが、いつの間にか「第1回の実質的な資金調達」と意味を変化させていった、というのが正解のように思われます。

なるほど!そうすると、ニュアンスとしては「シリーズA」=第1回の大規模な資金調達、ということが言えそうですね。ただ、前々回のポストで書いたように、いまやシリーズAの前のシードラウンドで$4.5Mのバリュエーションが付いちゃう時代。$1M以上のシードマネーをVCから集めるStartupさんたちだっています。そんな世の中では、一昔前のシリーズAといまのシードラウンドの調達をうまく「大規模な資金調達」という量の問題で区別できるんでしょうか。すなわち、「なんのために調達する資金なの?」という観点を入れた方が、より厳密な定義に近づいていくのではないか、と個人的には思うわけです。

言い換えると、スタートアップ界隈の環境も状況も、変わり続けている。ってことは、「シリーズA」という言葉の定義だけでなく、「シリーズAでやるべきこと」の意味も変わり続けているのでは??

次回、各ラウンドで調達したお金で何をどこまでやると次のラウンドに進めるのか、最新の議論を追ってみたいと思います。